【遺産分割調停】相続発生後の収益不動産の収益・管理の問題を整理し、不動産を取得して代償金を支払う形で解決した事案
相談前
ご相談者様は、祖母の代襲相続人であり、ほかに相続人が4名いるところ、相続人のうちの1名が、長男である自身が遺産の大部分を取得すべきだと頑なに主張していて話し合いが進まないことでご相談に来られました。
主要な相続財産が都心のビルとその借地権であり、ご相談者様は取得を希望されていましたが、分割方法が決まらず、地代が未払となり、テナントからの賃料収入が未回収となっている状態でした。
相談後
ご依頼をいただき、他の共同相続人並びに借地の地主及び所有ビルのテナントと交渉し、ご依頼者様が相続人代表者として、賃料を回収し、地代を支払うことと合意しました。都心のビルであったため、賃料を回収することで、地代を支払っても、相当額の余剰金が生まれました。
また、被相続人は上場株式を所有していたようだがどの証券口座・どの株式かわからないということでしたので、こちらも調査し、換価して調整することができました。
これらの結果、ご依頼者様のご希望通り、不動産を取得し、他の相続人に代償金を支払う形で解決することができました。
弁護士のコメント
(1)相続財産調査(上場株式)
遺産分割を進めるには、相続人を調査・確定し、分割対象となる遺産の範囲を調査・確定する必要があります。
ここで、被相続人が上場株式を所有していたことはわかるけれども、どの証券会社にどの銘柄を所有していたかまではわからない、というご相談も多くいただきます。
そのような場合の遺産調査の方法としては、証券保管振替機構(いわゆる「ほふり」)に開示請求を行うことが考えられます。
証券保管振替機構は、「社債、株式等の振替に関する法律」に基づき、金融商品取引所に上場している有価証券の情報を一括管理しているため、遺産の調査という観点からは、情報の開示を受けることで被相続人の保有している有価証券の調査が可能となります。
具体的には、証券保管振替機構からは、株主名簿管理人への通知番号や被相続人が開設していた証券会社の情報が開示されますので、各証券会社に照会をすることで、株式の情報までたどり着くことができます。
当事務所においては、遺産分割交渉においても、証券保管振替機構への開示請求及び判明した各証券会社への照会を相続調査業務として代理で行っています。
(2)相続財産の収益・管理の問題(収益不動産)
相続財産に収益不動産がある場合は、相続発生後、その収益や管理費等をめぐり、多論点化する傾向にあります。
本件ではとくに、借地上のビルを所有していたため、テナントとの関係だけではなく、地主との関係も問題となっていました。
不動産の取得者が決まらないなかでも、地主との関係では、各相続人が法定相続分に応じて地代を支払う義務があります。また、相続発生後に発生する地代は、最高裁判例(大判大正11年11月24日)によると、不可分である使用収益を受ける権利の対価となるため、賃料支払義務も性質上不可分であり、相続人全員は連帯して地主に全額を支払う義務があると考えられます(支払った相続人は法定相続分に応じて他の相続人に求償する形になります。)。
そのため、遺産の分割方法が決まっていなくとも、地代は支払う義務があり、地代未払が継続すると土地賃貸借契約書が解除され、相続財産たる借地権が消滅してしまうおそれもあります。
本件においては、テナントからの収入額が大きかったため、未払となっていたテナントからの賃料を回収し、未納となっていた地代を支払うという一連の交渉を当事務所がご依頼者様の代理人として行い、整理することができました。